Bruce Springsteen-BORN TO RUN SESSIONS 【2CD】 [GW-18/19]

Bruce Springsteen-BORN TO RUN SESSIONS 【2CD】 [GW-18/19]

販売価格: 4,000円(税込)

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商品詳細

ブルース・スプリングスティーンはアメリカそのものである。第二次大戦後の世界で最も豊かな国に生まれ、少年期はその豊かさと自信を享受、青年期はベトナム戦争で揺れる社会、そして大人になってからは冷戦後の混沌とした世相、ブルースの人生はアメリカの現代史の歩みと密接にリンクしている。アメリカ人にとってブルースが特別なアーティストであるのは、この辺に理由があるのではないか。少年が成長していく過程における苦悩、そして社会に対する矛盾とそれと同居せねばならない現実との葛藤、典型的なアメリカの一般民衆はブルースを通して世間にメッセージを送ることを期待している。まさに「青春の叫び」であり、その時代の叫びである。

ブルースのコンサートで最も盛り上がるハイライトは、何といっても「明日なき暴走」であろう。常にコンサートのアンコール前の最も会場が過熱した時にダメ押しのように演奏されるブルースの代表曲であり、1975年にリリースされたブルース3枚目のアルバムのタイトル曲でもある。アルバム『明日なき暴走』は1975年8月25日にリリースされた。その圧倒的な迫力と楽曲の力強さ、ロックンロールの現在と未来を包括したかのようなこのアルバムは、瞬く間にチャートを駆け上がることになる。それまでアルバムのセールス的にパッとせず、それでも地道にライヴを重ねてきたブルースの最初の到達点が、この『明日なき暴走』として結実したのである。本作は、このアルバム『明日なき暴走』のセッション音源を収録している。

「涙のサンダーロード」は3バージョン。Take1において既に完璧に曲は完成している。静かに始まるピアノのイントロから徐々に盛り上がっていくスリリングな曲構成。ブルースはまだ流して歌っていることから、これをリリース・バージョンにする意図は希薄だったように思える。Take2はなんとイントロにサックスが挿入されている。試行錯誤の痕跡であろうが、最終的には割愛されてしまう。リリース・バージョンに慣れた耳には違和を覚えるが、やはりこの曲はピアノによるシンプルなイントロがベターだったと判断されたのであろう。アコースティック・バージョンはまったくメロディが異なり、歌詞でそれとわかるほどの崩し方である。

「夜に叫ぶ」のデモテイクはブルースのカウントから始まる。疾走感あふれる演奏はそのままながら、ブルースのヴォーカルだけが浮き上がっており、歌いまわしなどを模索しているかのようだ。おそらく事前にレコーディングしたオケをバックに歌っているのであろう。早口で畳みかけるような歌詞であるため、まだ未完成という印象は拭えない。この曲にはヴォーカルがダブル・トラックのテイクも残されている。こちらはヴォーカルにズレが出ないようにか、かなり丁寧に歌っているのがわかる。

「裏通り」は本作に4バージョン収録されている。Take1から既にブルースが全開している。特に「ハァ〜ロンザバ〜ックストリーッ♪」の部分の枯れた発声での歌いまわしが、意図的にそれ以外の部分と濃淡をつけているのがわかる。カウントから始まるtake2は、このままリリースしても構わないような完成度の高いものである。With Stringsとクレジットされた2バージョンは、最終的にリリース・バージョンからカットされた楽器がそのまま残されたものである。イントロからしてギター・ソロが挿入され、その印象はかなり異なったものとなっている。なにせ終始ギターが縦横無尽に重ねられているので、これもまたカットして正解であったろう。

ディスク1の最後に収録されているのは、このアルバムのレコーディング時に収録されておりながら、お蔵入りとなった楽曲である。「Lonely Night In The Park」はどちらかといえばセカンド・アルバムに近い曲調である。「Linda Let Me Be The One」は美しいメロディを持つバラードである。「Walking In The Street」は「Lovers In The Cold」という仮タイトルでも知られている曲である。歌詞がまだ未完成なようで、ブルースはウォウォウォ〜というハミングでメロディを追う部分が散見される。「A Love So Fine」は50年代ふうの古いロックンロールを意識したオールディーズのカバーのような曲である。残念ながら歌詞はまだ入っておらず演奏のみの収録である。

そしてお待たせしましたの「明日なき暴走」である。ベースを前面に出した導入部分、そして煌びやかな演奏に乗せてあの印象的なリフが繰り返される。この強弱メリハリのつけかたがこの曲を名曲にしている。驚くのは女性コーラスが入っている点である。何もここまで大袈裟にしなくても良かったのではないか、やり過ぎではないか、そのような判断で最終的にはリリース・バージョンからは割愛されたのだろう。さらにこの曲もヴォーカルがダブル・トラックのバージョンが残されている。

「彼女でなけりゃ」はタイトルこそ軽いラヴ・ソング的なものでありながら、壮大な曲はいかにもブルースのテイストであふれている。ドラムを前面に出しリズムを強調し、いくぶんエコーをかけたヴォーカルが実にのびのびと歌われている名曲である。本作には2テイク収録されているが、いずれもリリース・バージョンとは別のものである。Alternate take2は密室でブルースが目の前で歌っているかのような生々しさである。これはヴォーカルに一切のエフェクトを排除し、シングル・トラックで生のままの歌であるからだろう。

「ミーティング・アクロス・ザ・リバー」は、レコーディング中は仮タイトルとして「Heist」と呼ばれていた。本作に収録の2テイクは、いずれもそのワーキング・タイトルとしてレコーディングされたものである。サックスの音色が都会的なスノビズムを感じさせないのはブルースならではであろう。

そしてアルバム最後を飾る「ジャングルランド」である。Take 1はブルースの呟くようなカウントから始まり、いきなりオーケストラが大々的にフューチャーされたものとなっている。そこか居場所がなさそうなオーケストレーションである。Take2は何やらスタッフと思しき声から、やはりブルースの呟くようなカウントから始まる。曲はほぼ完成ながら、歌いまわしが固定されておらず、様々な歌い方を試しているかのようだ。Take3も同じくカウントから始まるが、サスペンス・ドラマのような弦楽器の音で始まるのには驚いてしまう。あまりに不似合いだったからか、後ろでブルースが笑っている声が入っている。最後のテイクは、この壮大な曲のエンディング部分を決めかねていたのか、その箇所だけ集中してリハーサルをしている音源である。スタジオにいる女性スタッフがサジェスチョンをしたりする様子も収録されている。驚くのは女性のソプラノ・ソロが付与されている点である。もちろん最終的にはカットされてしまうのだが、試行錯誤の過程においてはこのような突飛もないアイデアまで試されていたということに驚きを禁じ得ない。

ブルース・スプリングスティーン3枚目のアルバムにしてロック史に刻まれた名盤『明日なき暴走』のスタジオ・セッション音源を網羅した2枚組である。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。

DISC ONE
THUNDER ROAD
01. take 1
02. take 2
03. take 3
04. acoustic version

NIGHT
05. demo
06. double vocal track

BACKSTREETS
07. take 1
08. take 2
09. with strings #1
10. with strings #2

OUTTAKES
11. Lonely Night In The Park #1
12. Lonely Night In The Park #2
13. Linda Let Me Be The One
14. Walking In The Street a.k.a. Lovers In The Cold
15. A Love So Fine

DISC TWO
BORN TO RUN
01. with strings
02. with strings & double vocal
03. instrumental basic track

SHE'S THE ONE
04. alternate take 1
05. alternate take 2

MEETING ACROSS THE RIVER
06. working title “Heist” take 16
07. working title “Heist”

JUNGLELAND
08. alternate take #1
09. alternate take #2
10. alternate take #3
11. rehearsal for the ending