Pink Floyd-THE LONELINESS OF THE LONG DISTANCE RUNNER 【2CD】 [STCD-12/13]

Pink Floyd-THE LONELINESS OF THE LONG DISTANCE RUNNER 【2CD】 [STCD-12/13]

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商品詳細

■1975年6月18日ボストン公演を高音質完全収録

 『狂気』の世界的成功後の1973年10〜12月、ピンクフロイドは、『狂気』の「Money」や「Time」で実践した身の回りの音を楽器のように使うアイデアを飛躍させ、本物の楽器を一切使わないアルバム『Household Objects』の制作に取り組む。しかし作業は難航を極め、制作は頓挫してしまう(その断片は2011年の『狂気』『炎』両BOXに1曲ずつ収録されている)。ギルモアは『狂気』がポップ過ぎると感じていたと後に語っているが、実験的な『Household Objects』が失敗したことから、バンドはかつての「Echoes」のような長尺な曲作りに『狂気』の後の方向性を再度求めることになる。

その結果、1974年のフランス(6月)とイギリス(11〜12月)のツアーは、長尺の新曲を披露する第1部と、『狂気』全曲を再現する第2部という構成となり、新曲として「Shine On」(約20分)、「Raving and Drooling」(約12分)、「You’ve Gotta Be Crazy」(約18分)の3曲が披露された。今でこそよく知られている事実であるが「Shine On」は1975年9月にリリースされる『炎』の「Shine on You Crazy Diamond」のプロトタイプであり、後の2曲は1977年1月リリースの『アニマルズ』収録の「Sheep」と「Dogs」のプロトタイプであった。かつて『狂気』(73年3月リリース)のプロトタイプが1972年1月のツアーから演奏され、ライブ活動を通じて徐々に作品が仕上げられていったように、『狂気』の「次作」も、こうして1974年のツアーから演奏されていたのである。これらのプロトタイプ3曲は、現在、1974年11月のWembley公演のテイクが『炎』BOXで聞ける。

この時点でおそらくピンクフロイドは、「Shine On」を片面に、「Raving and Drooling」と「You’ve Gotta Be Crazy」をもう片面に収録するアルバムの構想を抱いていたと思われる。1974年ツアー終了後間もない翌1975年1〜2月、ピンクフロイドはアビー・ロード・スタジオで新作のレコーディングを開始する(2014年に、このセッションのものと思われるShine On長尺版のスタジオ・アウトテイクが流出している)。

1975年4月、新作のレコーディングを中断して、北米ツアー・ファースト・レグを行う。新曲披露の第1部、『狂気』の第2部、アンコール「Echoes」という構成は前年のツアーと変わりないが、このツアーから、「Shine On」は2つに分割され、その2つのパートの間に新曲「Have a Cigar」を挿入するという、より『炎』に近い形態に変化している。タイトルも「Shine On You Crazy Diamond」とアナウンスされている。また「You’ve Gotta Be Crazy」は演奏時間が5分近く縮められ、スタジオ・アルバムを想定したと思われるサイズに変更されている。

北米ツアー・ファースト・レグ終了後、いったんイギリスに戻り、アビー・ロード・スタジオで新作のレコーディングを再開するが、北米ツアー・セカンド・レグ開始までの約1カ月の間に2つの事件が起きている。ひとつは、1974年11月19日ストーク公演から新曲3曲(「Raving and Drooling」「You’ve Gotta Be Crazy」「Shine On You Crazy Diamond」)を収録したブートレグ『British Winter Tour 74』が1975年5月頃リリースされたこと。これは当時としては珍しいカラー・ジャケットで音質も当時としては良かったため、「新作」と誤解されてベストセラーとなった。一説には15万枚売れたとも言われている。そのためピンクフロイドは同じ内容で新作をリリースするわけにいかないという状況に追い込まれることになった。もう一つは、6月5日(?)、シドバレットをテーマにした「Shine On You Crazy Diamond」のミックスをメンバーたちが行っていたアビー・ロード・スタジオに、突如、容貌の一変したシド本人が姿を現し、メンバーたちを驚愕・狼狽させたことであった。

シドとの衝撃の再会直後の、6月7日、ピンクフロイドは北米ツアーのセカンド・レグを開始する。セットリストはファースト・レグとまったく同じであるが、この期間中に前述の『British Winter Tour 74』がベストセラーとなり、新曲が新曲でなくなってしまったため、おそらくセカンド・レグ中に、メンバーたちは、当初予定していた(そして制作も進んでいた)新作の内容変更を決断したものと思われる。皮肉なことに、1974年ツアー、北米ツアー・ファースト・レグ、その間のスタジオ・レコーディングと研鑽を積んできた後だけに、北米ツアー・セカンド・レグにおける新曲群の完成度は非常に高く、演奏も素晴らしい。したがって、セカンド・レグからの第1部(新曲5曲)を収録した本作のDISC 1は、当時リリース寸前までいったはずの幻の「新作」の完成形と言うべきものである。「新作」は、もしリリースされていたら、おそらく「Raving and Drooling」と「You’ve Gotta Be Crazy」がA面、「Shine On You Crazy Diamond〜Have a Cigar〜Shine On You Crazy Diamond」がB面であったろう。

北米ツアーを終えたピンクフロイドは、イギリスで7月5日にネブワース・フェスティバルに出演したあと、新作の最後のレコーディングを行う。この過程で、最終的に「Raving and Drooling」と「You’ve Gotta Be Crazy」は没となり、新たに「Welcome to the Machine」「Wish You Were Here」が加わって『炎』となった。「Shine On You Crazy Diamond」の最後の部分には、収録曲の変更で収録時間を水増しする必要が生じたのか、「part IX」が新たに付け加えられている。一方、「Raving and Drooling」と「You’ve Gotta Be Crazy」は、それぞれ「Sheep」及び「Dog」とタイトルも歌詞も変更され、後に『アニマルズ』に収録されることになる。つまり本作では『アニマルズ』とはまったく歌詞の異なるバージョンを聞くことができる。ちなみに、『アニマルズ』の「Dogs」はほぼA面すべてを占めることになったため、約17分と、1974年ツアー並みの尺に戻されているのが興味深い。

1975年北米ツアー・セカンド・レグは、フロイドの4人のほか、Dick Parry(サックス)、女性バッキング・ボーカル2人(Venetta Fields、Carlena Williams)(以上74年ツアーと同じ)。次回ツアーで参加するSnowy Whiteがまだサポーティング・メンバーで参加していないため、『炎』『アニマルズ』の楽曲を基本的に4人の編成で聴けるのはこの時期ならではである。

 1977年の『アニマルズ』はおそらくパンク・ムーブメントの影響もあって、全体的に荒削りでストレートな演奏になってしまっていたが、本作DISC 1で聞かれる『アニマルズ』プロトタイプの2曲(「Raving and Drooling」「You’ve Gotta Be Crazy」)のアレンジは、むしろ中期フロイドのオドロオドロシイ雰囲気に近く、印象がかなり異なる。特に「Raving and Drooling」のベースは「One of These Days」を彷彿、強いて言えば「One of These Days」に歌をつけたような感じにも思える。また前述の通り両曲とも歌詞が『アニマルズ』とは全く異なる(74年版とも若干異なる)。なお、『アニマルズ』の「Dogs」では前半をギルモアが、後半をウォータースが歌っているが、この「You Gatta Be Crazy」では後半も1974年ツアー同様、ギルモアが歌っている。「Have a Cigar」は『炎』ではロイハーパーがゲストでリード・ボーカルをとっているが、ここでは、(2011年の『炎』BOX収録のalternative versionと同様に)ウォータースとギルモアがユニゾンで歌っている。演奏も、『炎』よりソリッドなハード・ロック然としたもの。

本作DISC 2はコンサートの第2部にあたる『狂気』全曲と、アンコールの「Echoes」を収録している。「Echoes」はサックスと女性コーラスが入るという、74〜75年限定の珍しいアレンジであり、本ツアーを最後に演奏されなくなる。『狂気』の全曲再現はアルバム・リリース(73年3月)前のプロトタイプを含めると、72年以降毎年ツアーで行われてきた。しかし、ここでは、例えば、「The Great Gig in the Sky」が1974年ツアー同様に2人の女性ボーカルによって歌われていたり、曲の終盤がジャズっぽい展開になっていたりと、ライブならではのスタジオ版との細かい違いもある。「Any Color You Like」も女性ボーカルをフィーチャーした、よりフリーキーな展開となっている。

 また意外とも言える最大の聴きどころは、スタジオ版よりはるかに長尺の「Speak to Me」と「On the Run」にあるかもしれない。両曲ともSE効果がスタジオ版より強調されており、当時先進的な360度音響システムで会場全体を今で言うサラウンドにすることによって作り出した立体音響空間が、そこに放り込まれた聴衆の興奮とともに、超高音質ステレオ・オーディエンス音源だけに臨場感たっぷりに伝わってくる。この効果を体感できる音源はおそらくこのボストン75音源だけではないだろか。これらの点を踏まえると、本作で聴ける1975年版『狂気』は、単なる73年スタジオ版の忠実な再現ではなく、1972年プロトタイプからスタジオ版『狂気』を経てさらなる進化を遂げた最終形態と言えるのではないか、という気さえしてくる。なお、後年のギルモアズ・フロイドを別とすれば、ウォータースを含む4人フロイドで『狂気』が全曲再現されるのは、このツアーが最後となる。

まとめると、本作(ボストン75音源)は、disc 1に75年当時考えられていた『狂気』後の「新作」の幻の完成型を収録、disc 2には『狂気』の最終発展形態と、(「原子心母」とともに)フロイド中期の金字塔的作品であるEchoesのユニークなアレンジのバージョンを収録、ということになる。しかも、それを、75年ツアーの中で間違いなく最高音質、しかもステレオ音源で追体験することができる。

本作は、伝説の2人のテーパー、ダン・ランピンスキーとスティーヴ・ホプキンスによる音源をマトリックスしたもの。ランピンスキー音源は、75年ツアーの最高峰として知られる定番音源。ホプキンス音源も、ランピンスキー音源には及ばないものの、定番の高音質音源。二つをミックスすることで、ステレオの音像を実現している。ランピンスキー音源は音質でホプキンス音源を凌駕するものの数か所の欠落があり、その部分はホプキンス音源で補われている。内容の意義、演奏の充実度・完成度、音質の良さの3点が揃っており、このまま公式リリースしてもおかしくないほどの出来栄えである。美しいピクチャーディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。日本語帯付。

DISC ONE
01. Raving And Drooling
02. You've Gotta Be Crazy
03. Shine On You Crazy Diamond Part 1-5
04. Have A Cigar
05. Shine On You Crazy Diamond Part 6-9

DISC TWO
01. Speak To Me
02. Breathe
03. On The Run
04. Time
05. Breathe (Reprise)
06. The Great Gig In The Sky
07. Money
08. Us And Them
09. Any Colour You Like
10. Brain Damage
11. Eclipse
12. Echoes